【第15話〜16話?】 ・ログハウスのテーブル 朝食中 ずびずび泣いてるジャッキー 「…ジャッキー…汚い」 「うっ…だって…! アンナがこんな風に知らないひと達とご飯食べてくれるなんて…っ」 うっうっ 「……」顔を赤らめて朝食を食べるアンナ 「…とりあえず、あと10日延長して アンナちゃんとフリスビーの練習をする事になったのよね! 大会が10日後なんだっけ?」 「はい でるかはまだわかりませんが 出ても出なくても「遊んで」帰ろうと思ってます」 シベ太をちらっと見るアンナ 「ぜひぜひ!まあ大会っていっても親子や初心者だらけの小さいイベントだから 参加するんでもぜんぜん遊び感覚でいいんだけどね」 「へえ〜!おもしろそう! じゃああたし達もやっちゃう?!」 「いいねー!じゃオレキャッピーちゃんと組むかなー 早速メシ食ったらみんなで練習しよーぜ!」 「おー!!」 わいわいしてるあーちゃんとキャッピー アンナ、顔がひきつってる シベ太、横目で見てちょっと笑ってる ・外、広場 スカッ フリスビーを取り損ねるキャッピー 「あー今のはおしかったな」 「うーん…確かに なかなかタイミングが掴めないから  これは結構難しいよ」 フリスビーくわえて戻ってくるキャッピー 「ふーん じゃあ次オレやるわ!」 スカッ あーちゃんもキャッチできず 一同苦笑い 「まあそうだろうな」 「なんだこりゃ!まずフリスビーに追いつけねーんだけど!  お前の投げ方が悪いんじゃねーのー!?」 シベ太に文句言うあーちゃん 便乗してうんうん頷くアンナ 「お前らの足が遅いだけだろ」 「「なんだと!!」」 「まあまあふたりとも…ちょっとシベ太にお手本見せてもらおうよ」 「そうだ!お前やってみろ!ひとのこと言えなくなるからな!」 「あはは…じゃああたし投げるね」 「キャッピーちゃん思いっきりな!!」 キャッピー苦笑い 「じゃあいくよー それっ!」 キャッピー、かなり遠くにフリスビーを投げる シベ太走り出す めっちゃ速い   「!!」 パシッ(ナイスキャッチ) シベ太、くわえて戻ってくる 「まずは走りこみからだな」 あーちゃんとアンナ、めっちゃ嫌そうで悔しそうな顔 キャッピー困り笑い (すごい嫌そう…) ちょっと離れたところで、ましろとジャッキー 「楽しそうだなあ…アンナ」 「…だといいんですけどねぇ」 困り笑いするましろ   ・夕方 「じゃあ…残念だけど 私は仕事があるから一度帰るわね また来るわ」 「はい! あーちゃんも他の依頼よろしくね!」 「おう!こっちは任せとけ! シベ太〜アンナちゃんに嫌がらせすんなよー?」 「お前にだけは言われたくねえ」 「…アンナちゃん これだけ みんなに悪いからって頑張る必要もないし なんなら途中でやめちゃってもいいのよ アンナちゃんがやってみようって思えるところまでで大丈夫だから」 「…う うん…」 手を差し出すましろ 「楽しんでね!」 恐る恐る手を出すアンナ、握るましろ どさくさに紛れて手を出すあーちゃん サッと慌てて避けるアンナ 「あんたは嫌だって」 「えーっ酷くねぇ!?」 あはは… ・数日後、広場 パクっ! 上手くキャッチできるようになったアンナ 「おー!!すごいアンナちゃん! もうほとんど取れるようになったね!」 見てるジャッキーとキャッピー 「…うん…そんなに遠くじゃなかったらなんとか…」 「どうですか師匠!たった数日でこの上達っぷり!」 「ああ だいぶ良くはなったな まだまだジャンプのタイミングが甘いが」 「なんだよッ!お前の投げるタイミングが変だからだろ!!」 「あはは、シベ太語でまだまだ伸びるよって意味なんだよ ねっシベ太」 「それで…アンナ、大会はどうする? エントリー期限が明日までなんだけど… 出れそうかい…?」 ジャッキー、聞く ……… 俯向くアンナ しばらく悩んで 「……う うん… やって…みるよ…」 ! 「本当かい…!? じゃあ早速エントリーしておくね!」 「アンナちゃん…! よし!そうと決まったらもっと練習だね!」 「お前も兄貴と出るんだろ 人の事言ってる場合じゃねえぞ」 「んー、あたしはどうせ投げる方だろうしなあ」 「何言ってんだ 投げる方こそ責任重大なんだよ」 「えっそうなの!?」… 俯いてるアンナ ましろに言われた言葉がよぎる キリ… 胃が痛む (…大丈夫 きっとなんとか…なる) ・夕飯 「…ごちそうさま」 「あれ…アンナもういいのかい?」 「……あんまりお腹すいてない」 席を立って自室に行く 「…あたしなんてあれだけ運動したらすぐお腹すいちゃうけどなあ」 「そうだと思うんですけどねえ… いっぱい食べてくださいね」 笑ってるキャッピー 黙ってるシベ太 ・広場 曇り空 スカッ… ディスクが地面に落ちる キャッチが上手くできないアンナ 「…ここ数日不調だな」 「大丈夫…?具合悪かったら無理しないでね」 「…うん……大丈夫…」 「…いや 今日は休め」 「えっ…?」 「調子が悪い時は無理する方が逆効果になる」 「うん、あたしもそうした方がいいと思う 毎日ずっと頑張ってるから疲れちゃってるのかもしれないし…」 「………」 シベ太達、ジャッキーと牧場の手伝いをしながら 「大丈夫かな…アンナちゃん 急に元気がなくなった気がするけど…」 「確かに、食欲もないみたいだしね… 慣れない事でちょっと疲れてきたのかな…」 「……ジャッキー…」 アンナ、後ろから声かけてくる 「アンナ!具合は大丈夫かい? まだゆっくり寝てた方が…」 「ごめん  …ディスクドッグ大会なんだけどさ…  やっぱり…出るのやめようと思う…」 「えっ…!?」 かたまるジャッキー 「……出るって決めた途端…また怖くなったんだ…色々考えちゃって… そしたら体が思うように動かなくなって… 練習頑張っても、きっと緊張して上手くいかないと思う… おれには…やっぱり無理だと…思うから…」 震えて俯向くアンナ 「ほ…本当にいいのかい…?せっかくのチャンスなのに…」 「別にいいんじゃないか」 顔を上げてシベ太を見るアンナ 「張り合いが持てると考えて大会を目標にはしたが 嫌々出させて後悔されても困るしな オレが勝手に考えた事だ  お前がそう決めるなら その通りにしたらいい」 「…お…っおれだって…本当は頑張りたいよ…っ 頑張りたいけど…!」 「だからもう頑張らなくていいって言ってるだろ」 「…ッッ!!」 涙目になるアンナ 「どっ…どうせおれは意気地なしだよ!! 何やったって…逃げたくなって……ッ 結局…何も変われないんだ!!」 泣き出して走っていってしまう 「ア…アンナ!!待っ…」 「シベ太」 キャッピーがジャッキーを遮る 「言いたい事はわかる でも…それじゃ伝わらないと思うよ」 アンナを追いかけて走り出すキャッピー ちょっとポカンとしてるシベ太 ・雨が降り出してる丘の上 いじけて伏せってるアンナ 「風邪ひいちゃうよ」 アンナに向けて傘を差し出しながら隣に座るキャッピー 黙って俯いてるアンナ 「…さっきはごめんね  シベ太の言い方…あれはよくなかったね」 「……… …そんなこと…ないよ  あいつは…間違ったこと言ってない こんな風に…一度決めたのにうじうじ悩んでる弱虫なんて 誰だって嫌になるもん…」 キャッピー、アンナを見つめる 「…ほらまったく…シベ太ってばさあ…」はあ… キャッピーの方を見るアンナ 「アンナちゃん、違うよ シベ太はそういう事が言いたかったんじゃない もう十分アンナちゃんは頑張ったから、 大会なんて出なくても大丈夫だよって言いたかったんだと思う」 「…え…?」 「せっかくアンナちゃんとこうやって楽しく 話したり遊べる様になったのに… やらなくてもいい事まで押し付けて台無しにしたくない だから無理させたくないだけなんじゃないかな 今回の依頼、実はもうとっくに達成できてるんだ アンナちゃんは気付いてないかもしれないけどね」 「…!」 「…でも… もしあたしがアンナちゃんだったら 頑張らなくていい じゃなくて 一緒に頑張ろう って… 言って欲しかったかもなって」 涙目になるアンナ …こく… 頷く それを見て静かに笑うキャッピー 「シベ太も本当はそう言いたかったんだろうなーって」 「あ…あいつが…!?」 びっくりするアンナ うんうん頷き返すキャッピー 「多分ね」 「…キャッピーは… …あいつのこと よくわかってるんだな…」 ぐす 「全然わかってないよ あたしが勝手にそう思ってるだけだから」 にっこり笑うキャッピー 釣られて笑うアンナ 雨が止み出して、雲が晴れてくる 「あっ見てアンナちゃん! 虹!」 虹がかかった雨上がりの空 後ろ姿の2人 シベ太達のところに戻ってきたふたり 「あの…さ…何回も言うこと変わってごめん …おれ…やるよ …もうやめるなんて言わない」 シベ太の目を見て言うアンナ ふっと笑うシベ太 「ラストスパートだ  やるからには追い込むぞ」 「…の前に シベ太」 アンナの腕を軽く抱えながら ちょっとシベ太を睨むキャッピー 困った顔で察するシベ太 「…さっきは…悪かった お前が意気地無しだなんて思ってない やるぞ 一緒に」 顔を上げて、少し笑うアンナ 「うん…!」 キャッピーも微笑む ・大会当日 わいわい 「いよいよだねー! シベ太達とはライバルって事になるけど お互い頑張ろうね!」 「つっても一番ランク低い初心者コースだしな〜 気楽にやろーぜ」 「賞金絡まねーとえらく適当だな」 「まあな!」ふふん 「褒めてねーよ」 「みんなー!お待たせー!」 ましろが駆け寄ってくる 「ましろさん!来てくれてありがとうございます!」 「もちろん!…あれ、アンナちゃんは…?」 キョロキョロしてはっとするましろ アンナが足元で伏せってブルブル震えてる 「…相当緊張しちゃってるみたいねぇ」 「さっきっからずっとこんな感じだもんなー アンナちゃーん だいじょぶだってー 失敗しても死ぬわけじゃねえんだしさー」 「あたしとあーちゃんなんて 全然一緒に練習してないから不安しかないんだけど(笑)」   ピーンポーンパーンポーン アナウンス 「ただいまより開会式を始めます 出場される皆さんはステージの前にお集まりください」 大会始まる 親子とか友達いろんなペアの出場絵 「へっ、なんだぁレベル低いなあ〜  この調子じゃオレたち優勝じゃねえ?」 踏ん反りかえってるあーちゃん アナウンス 「続いてのエントリー! あーちゃん&キャッピーペア〜!」 「あーちゃん!行こう!」 「おうよ〜!」 腕グルグル フィールドに出て行くふたりの後ろ姿を見ながら アンナに話しかけるシベ太 「…見てろよ  アイツら絶対やらかすぜ」 「え…」 あーちゃん、スカばっかり 『おーっと!?どうしたどうしたあーちゃん選手〜!全然とれません!! カッコつけてるけどまだ一投もとれてなーい!』 「うるせー!!これから決めんだよこれからー!!」 あははは 周りから笑い声 「あーちゃん、持ち時間1分しかないんだから 近距離で少しでもポイント稼ごうよ…」 「ダメだ!手前で取るより遠いとこで取ったほうが高ポイントなんだろ!? 思いっきり投げろ!!」 「えー…?もう知らないから…ねッ!」 シュルーーン!! 開き直って超思いっきり投げるキャッピー 「あーー!!それはっ!それは無理ィーーー」 ずべっ めっちゃダッシュするもコケるあーちゃん 更に笑いものに 「…ほらな」 ニヤつくシベ太 アンナもちょっと笑う アナウンス 「さあー続いてのエントリーは アンナ&シベ太ペアー!」 「いよいよだね…」 シベ太とアンナを見るジャッキー シベ太、固まってるアンナを見下ろす 手を差し出す 見上げるアンナ 思い直す様に顔を振って、うなづき、 シベ太の手を取る 『準備はいいですか? それではいってみましょー! レディー…ゴー!』 ピーっ 「行くぞ」 「う…うん…!」 シュッ 投げるシベ太 『一投目!』 ガクっ… アンナ、走り出そうとするが、 一歩目で足がもつれて崩れる 「…!?」 みんなびっくりする アナウンス 『おっとアンナ選手さっそく転倒! 落ち着いて行こう!』 「そうだよ!アンナ落ち着いて!」 「まだ一投目だよ!大丈夫!」 ジャッキーとキャッピー、声をかける 足がガクガク震えてるアンナ (…あ…あれ…? な…なに…これ… まともに…立てない…っ) バックン バックン はあ…はあ… 息も上がってくる (は…はやく…ディスク…取ってこなきゃ…) 震えながら歩き出そうとするがヨロヨロおぼつかない 「だ…大丈夫かよアンナちゃん…? さっきので足痛めたか…!?」 「いえ…きっとそうじゃないわ…アンナちゃん…っ」 心配そうに見つめるましろとあーちゃん シベ太、黙ってアンナを見てる ざわつく周り なんとかディスクをくわえて引き返す (…いま……みんながおれのこと見てる いきなり動けなくなった変なヤツだって…… …見られ…てる…… 見られてる…?) トラウマの光景が浮かんでしまう バックバックバックバック 心拍上がる 涙が止まらなくなる 「さあ残りタイムが迫っています…! どうしたアンナ選手、持ち直せるのか…!?」 (…なんでだよ… あんなにたくさん練習したのに みんな応援してくれたのに …逃げないって…決めたのに…ッ なんで足が動かないんだ…! なんで…っ なんで…!! 「アンナ」 アンナ、顔を上げる 目の前にシベ太 「お前は変われる 自分を信じろ」 アンナの肩をやさしく掴んで呼びかける はっとするアンナ 「……うん!」 (…そうだ) ヒュッ… ディスクを投げるシベ太 走り出すアンナ アナウンス 「ラストチャンスです!」 どんどん走り抜けて 最大ポイントのラインへ (変わるんだ) (おれは 変わるんだ!) 跳び上がるアンナ 青空を背にディスクを空中でキャッチ 一瞬静まり返る会場 ピーっ 「終了です! すごいぞアンナ選手ー! 最後の最後に綺麗なジャンピングキャッチが決まりました!!」 わーっ!! 拍手喝采で盛り上がる会場 喜ぶキャッピー達 歓声を受けて立ちすくんでるアンナ、 息を切らしながら周りを見渡してる 振り返った視線にシベ太が映る 笑ってるシベ太 ブワッと涙が出てくるアンナ シベ太の元に駆け出す ・夕方 牧場の入り口 「長い間お世話になりました!  すごく楽しかったです!」 「こちらこそ本当にありがとうございました! 皆さんのおかげで僕たちもきっかけを貰えて… ほんとに……うちのアンナがっ…こんなに……うっ」 うるっ また涙ぐむジャッキー 「ジャッキー…何回泣くんだよ…もう」 呆れてるアンナ 「しっかしアンナちゃんホント凄かったわ! オレもウルっときちゃったもん!」 「ほんとほんと!入賞にはならなかったけど あれほど歓声浴びてたの アンナちゃんだけだったものね」 「……み…みんなのおかげだよ…  …それに…」 チラッ 照れながらシベ太を上目遣いで見るアンナ シベ太もアンナを見て微笑む 「…決めたのはお前だろ  その傷がお前を苦しめてきたのかもしれないが  その傷がお前を変えたんだ」 首元にそっと手を添えて 静かに笑うアンナ 「…また来いよ  依頼じゃなくても…遊びに…さ」   ・別の日  牧場の朝 牛の世話をしてるアンナ ジャッキー、駆け寄る 「アンナ! 悪いんだけどこっち手伝えるかい? 牧場カフェ、オープンした途端に賑わっちゃってさ〜 バイトさんだけじゃ接客が追いつかないんだよ」 「あ、うん! 今行くよ!」 笑って走り出すアンナ おわり